今昔物语集攷 生成?构造と史的圏域
『今昔物语集』と言えば、多くの人がまず思い浮かべるのは芥川龙之介だろうか。非常に知名度の低かったこの作品を、一跃古典説话の代表作品へと押し上げた芥川は、『今昔』の秀逸な説话をモチーフに数多くの作品を残した。高校教科书の定番教材となった『罗生门』もその一つであるし、现在では古典教育の初期段阶で、ほぼ全ての教科书が『今昔』の説话を取り上げている。
しかし、知名度の急速な上昇に反して、『今昔』の全体像は未だに深い谜に包まれている。そこには様々な要因がある。まず、この作品は院政期と呼ばれる十二世纪に执笔されたと思しいものの、未完成のまま死蔵され、あまり流布しなかった作品であること。また、そのために本格的な研究は明治以降に始まり、他の古典作品に比べて歴史が浅いこと。加えて、『今昔』自体が全叁十一巻、累计千话を超える説话を収めた、日本文学史上最大の説话集であること。さらに、本作品には构成?配列の点で壮大な构想が窥われる一方で、そこかしこに多くの矛盾や撞着が见られること。このような様々な事情から、『今昔』全体を统一的に捉えることは非常に难しく、総合的な研究は难渋してきた。
そうした研究状况の中で、本书は〈各话と全体构造〉、〈编者の読者意识〉、〈作品の内部と外部〉といった复合的な视点を组み合わせることによって、『今昔』という作品の総合的解明と文学史的位置付けを试みた。この巨大で谜めいた作品を解明するには、一つの视点からの探求では到底足りないと考えたためである。
例えば、第一部は『今昔物语集』の内的世界を対象に、その生成や构造を追ったものだが、全体を通して、各话を関连资料と比较検証した成果に基づき、全体构造を考察するという手法をとっている。日本の古典説话の最も重要な要件は「伝承性」にある。一つ一つの説话は作者によって创作されるものではなく、必ず何かしらの话を受け継ぎ、&谤诲辩耻辞;少々&濒诲辩耻辞;手を加えて成立する。そして、『今昔』の场合、収録説话のほぼ全てが书かれた説话を书承したと考えられている。そこで、现时点で関连が指摘されている説话をできうる限り収集し、一话一话を『今昔』の説话と比较検証することで、编者が手を加えた痕跡を探し、その営為を全体の编纂行為と结びつけて考察した。
また、第二部では『今昔』の生成を多角的に考察することを目指し、周辺の作品を「史的圏域」として一定数扱った。近い时代の同类作品、隣接ジャンルの同时代作品、生成に関连する作品?资料を対象として考察した。作品内部への视点のみならず、外部からの视点を导入することによって、『今昔』世界の轮郭をより一层明确にし、この极めて特殊な説话集を日本文学史の中に位置付けることを目指したものである。
『今昔』の本格的研究は近代以降のものではあるが、质と量を兼备したこの作品が抱える不思议な魅力に引き寄せられるように、数多くの研究者が本作品に挑み続けてきた。それでも解き明かされない奥深さを持つ『今昔』の雄大な魅力を、本书を通して実感してもらえれば幸いである。
(紹介文執筆者: 川上 知里 / 2022年1月21日)
本の目次
一 『今昔物语集』概説
二 问题の所在と本书の目的
叁 本书の构成
第一部 『今昔物语集』の世界
第一章 各話冒頭部の意義 ―構成と表現の連動性―
はじめに
一 事実性の强调と整合性の确保
二 构成?配列との连动
叁 冒头部と结语
四 二方向への欲求
おわりに
第二章 非仏法部の形成 ―巻十を基点として―
はじめに
一 巻十の话群构成
二 中国正史の存在と天竺部?本朝部
叁 构成と表现の「本朝化」
おわりに
第三章 恐怖表現の意義 ―巻九の生成理由をめぐって―
はじめに
一 恐怖表现の実相滨―正方向への影响力―
二 恐怖表现の実相滨滨―内から作品を崩す力―
叁 巻九「震旦付孝养」构成への影响
おわりに
第四章 歴史叙述からの解放 ―巻三十を手がかりに―
はじめに
一 仏教的観点の存在
二 仏教と恋との葛藤
叁 巻叁十の存在意义
おわりに
第五章 仏法と王法 ―巻三十一と王法仏法相依論―
はじめに
一 叁国における仏法と王法
二 巻叁十一の「仏法」
叁 巻叁十一の「王法」
おわりに
第六章 事実らしさへの執着 ―信憑性確保の手法と理由―
はじめに
一 仏法部における信凭性确保の手法
二 信凭性确保の理由と背景
叁 非仏法部における信凭性确保の実态
おわりに
第七章 结语にみる読者意识(1)―主题と合致する结语の実态―
はじめに
一 结语の性质と研究史
二 一般読者 ―唱導的欲求―
叁 编者内の〈読者〉―〈执笔者〉との応答―
四 编者内〈読者〉と〈执笔者〉の葛藤
おわりに
第八章 结语にみる読者意识(2)―逸脱する结语の生成―
はじめに
一 「君子危うきに近寄らず」型
二 仏法唱导型
叁 日常的教训型
おわりに
第二部 『今昔物语集』の史的圏域
第一章 『世継物語』論 ―説話化の営み―
はじめに
一 和歌から説话へ
二 物语类から説话へ
叁 『世継物语』の生成
おわりに
第二章 『拾遺往生伝』論 ―歴史意識と文学意識―
はじめに
一 特徴と问题点
二 歴史意識 ―配列と国史受容―
三 表現へのこだわり ―文飾の排除と平明化―
四 説話内部への追求 ―為康の「説話化」―
おわりに
第三章 唱導資料と説話集 ―院政期の説話引用をめぐって―
はじめに
一 手控えに見る説話引用 ―『言泉集』『諸事表白』『草案集』「弁暁説草」『三国伝灯記』―
二 説法記録に見る説話引用 ―『法華百座聞書抄』『覚鑁聖人伝法会談義打聞集』―
おわりに
第四章 『打聞集』論 ―説話集としての可能性―
はじめに
一 原拠との距离
二 汉文体の出现と「云々」问题
叁 作成意図と「打闻」
おわりに
第五章 金沢文庫本『仏教説話集』論 ―唱導資料の中の説話集―
はじめに
一 説话の引用形态の特徴
二 説话本文の特徴
叁 唱导资料としての位置付け
第六章 『長谷寺験記』論 ―虚構の霊験記?歴史書―
はじめに
一 エピソードの挿入
二 长谷寺霊験谭への変容
三 霊験譚から長谷寺史へ
おわりに
终 章
一 『今昔物语集』の世界総论
二 『今昔物语集』の生成试论
関连情报
第二次第十七回 (通算二十九回) 関根賞 (関根賞運営委員会 2022年8月8日)
https://spc.hujibakama.com/
第4回 (2022年度) 説話文学会賞 (説話文学会 2022年6月26日)
第1回东京大学而立赏受赏 (东京大学 2020年)
/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
书评:
竹村信治 評 (『国語と国文学』通巻1186号 第99巻第9号、2022年9月)
中根千絵 評 (『学芸国語国文学』第54号 2022年3月)
松尾葦江 評 (中世文学漫歩 2021年5月7日)