ドイツ?ロマン主义と <芸術家小説> ティーク『シュテルンバルト』の成立と性质
この本は「芸术家小説」と言われるもの、つまり芸术家が主题となる小説を扱ったものです。家で趣味を楽しむ学生の皆さんのうちには、たとえば动画サイトに投稿してみる方もいるかもしれません。あるいは、风変わりなパフォーマー达の动画に梦中になっている人はもっと多いでしょう。では、そうした、自己表现のために作品をつくる人达、芸术家はいつ顷からいて、注目を浴びるようになったのでしょう。
芸术の歴史は古くからあります。教科书や博物馆では、纪元前の作品を见ることができます。しかし、それらの制作者は、金銭等の対価をもらって指定されたものを作る、いわば职人的な性质を强く持っていました。现代の、自分が思い描くものを形にする芸术家とは违います。
どの时点から、自分の表现したいものを表现する「芸术家」が生まれたのか。それは、はっきりとは言えません。たとえば作品に自分の名前を彫ること、画家が自分を肖像画の题材に値する伟大な存在だと认识して自画像を描くこと、注文を受けずに自分の作りたい物を作り、それを市场で売ること。どれも创作者の自己表现欲の表れとされていますが、こうしたことは一度に起こるわけではありません。
それでも、芸术家の创作者としての自意识を测るうえで重要な出来事がひとつ、18世纪末に起こります。「芸术家小説の成立」です。本书の题名案には『芸术家小説の成立と性质』というものがありました。それは本书が、元祖にして最も典型的な芸术家小説と呼ばれる、ドイツの作家ティークの『フランツ?シュテルンバルトの遍歴』を扱っているからです。この作品を皮切りに、创作に取り凭かれる芸术家达や、奇妙な振る舞いをして耳目を集める芸术家达を扱った小説が次々に登场しました。学生の皆さんは现代の技术を用いた、最新の创作を目にしていますが、その根本にある创作者の精神は、『シュテルンバルト』以降、表现され続けてきました。このことが、本书を読めば分かります。
本书ではまた、『シュテルンバルト』を中心に典型的な芸术家小説をいくつも取り上げて、それらの小説で描かれる芸术家の特徴や、芸术家が目标としたもの、芸术家と社会との関係などについても述べています。すなわち「芸术家小説の性质」です。ティークや、本书で重点的に扱うヴァッケンローダー、ホフマンはドイツ?ロマン主义に属する作家ですが、本书では他にスペインやフランスの作品も取り上げていて、その点、越境的研究という侧面もあります。芸术家小説全般についての研究书として类书のないものになっていますので、日本も含めた他の国や地域の小説が好きという読者にも参考になると思います。
最后に、本书の题名の「成立と性质」は言ってみれば言叶游びです。ティークはユーモアを得意とする作家でしたから、それに敬意を表して、本书ではこの题名に限らず、いくつか真剣な読者を笑わせる、あるいは腹立たせるユーモアを交えてみました。题名を决めたあとに気づいたのですが、比较文学者である平川祐弘が、ルネサンス期の芸术家にまつわる伝记の着者ヴァザーリについて书いた「ヴァザーリの位置と意味」という文章の「位置と意味」という题も、本书の「成立と性质」と同じ意図の言叶游びでしょう。私がそれに気づくには、自ら游び心を発挥する必要があったわけで、同様にティークのような作家を読み解くには、その読み解き自体にユーモアが求められるように思います。そのような、学术书にささやかなユーモアを交える実験の书としても読んでいただき、楽しんでいただけたらと愿っています。
(紹介文執筆者: 片山 耕二郎 / 2021年2月9日)
本の目次
序 章 ルートヴィヒ?ティークの略歴に代えて
1 ロマン主義を代表し、かつ関心を持たれない作家ティーク
2 小説家以外としてのティーク
3 小説家としてのティーク
第1章 芸术家小説史における位置づけ
1 本書における芸術家小説の定義
2 芸術家小説の「元祖」
3 『フランツ?シュテルンバルトの遍歴』の評価
4 E?T?A?ホフマンと狂気の芸術家、Künstlerromanと異なる枠組み
5 ティークに続くKünstlerromanの作家たち、そして芸術家小説の展開
第2章 ヴァッケンローダーとの共作
1 ヴァッケンローダーの略歴
2 ヴァッケンローダーとティークの友情
3 ヴァッケンローダーと「ロマン主義」
4 『真情の披瀝』と『芸術に関する幻想』の発生と内容の検討
5 『シュテルンバルト』におけるヴァッケンローダーの役割
第3章 『シュテルンバルト』までのティークの活动
1 教養人としてのティーク
2 ティークの修業時代と初期作品の背景
3 『シュテルンバルト』と初期作品の類似と相違
第4章 芸术家と社会
1 芸術家小説と社会
2 ティークとヴァッケンローダーの共作における芸術家と社会
3 ティークの後期小説における芸術家と社会
4 『シュテルンバルト』における芸術家と社会
第5章 狂気の芸术家――あるいは芸术家の感じやすさ
1 狂気の芸術家を扱った小説と『シュテルンバルト』の位置付け
2 『シュテルンバルト』における芸術家の狂気
第6章 现実の美と理想の美
1 ティーク以外の作家
2 『シュテルンバルト』と関連作品における理想の美と現実の美
終 章 『シュテルンバルト』の芸術家小説性
1 、『シュテルンバルト』の登場人物の役割による分類
2 作品の駆動力としての登場人物
3 芸術の意味を問いかける登場人物
4 南北ヨーロッパの芸術の違いを示す登場人物
5 芸術論を披露する登場人物
6 芸術家の遊興性?官能性を表現する登場人物
7 遍歴を体現する登場人物
摆付録1闭『フランツ?シュテルンバルトの遍歴』各章の出来事一覧
摆付録2闭『フランツ?シュテルンバルトの遍歴』より抜粋訳
参考文献
人名?作品名索引
おわりに