日本気象行政史の研究 天気予报における官僚制と社会
本书は、行政学の観点から近代以降の日本の気象行政の歴史を描き出そうとしたものである。行政学は教科书や讲义においてその学ぶ意义を説明する际、行政の活动が人々の日常生活にいかに身近な存在であるのかを例に挙げることが多い。しかしながら、天気予报をはじめとする気象行政は、人々の生活に最も身近な行政の一つでありながら、行政学が必ずしも十分な研究をしてこなかった领域である。そこで本书は、天気予报をめぐる日本の気象庁と社会との関係を歴史的に考察することで、気象庁の実态解明を目指すことを试みている。
全体の構成は、结语を除き、行政学研究上の課題や先行研究の検討、分析視角の設定といった理論的な準備作業の部分 (序章および第一章) と、歴史研究の部分 (第二章から第五章) から成る。歴史研究の部分に絞ったうえで概要を紹介すると、第二章は、明治期から昭和戦前期までの期間を対象とし、「研究機関」としての性格を色濃くもった戦前の中央気象台 (1956年より現在の気象庁となる) が、戦時期の社会との接点の実質的な消失を通して、研究よりも日々の課業の遂行に専念する「現業官庁」へと移行していった過程を示した。
第叁章は、戦后から1950年代までの时期を対象としている。戦后復兴の过程で社会との接点を回復していった中央気象台は、数値予报という新たな予报技术を通して社会的な支持を调达しようとしたことを明らかにした。第四章は、主に1950年代后半から1980年代の时期を対象としている。运输省の外局に昇格した気象庁は、数値予报以外にも気象卫星などのように客観的な天気予报を支えるための観测手段の技术开発を进めていき、1980年代までには今日に至る気象庁の天気予报に関する技术的な基盘が确立したことを指摘した。
第五章は、1980年代以降から概ね2000年代までを対象としている。「天気予报の自由化」の改革は、防灾気象情报の提供をめぐって时に官民の紧张関係を生み出すことにもなった。改革のなかで「防灾官庁」を掲げた気象庁は、「指导」を通じて紧张関係の解消を図るなど、适切な官民関係の构筑に向けて模索を続けていることを明らかにした。
以上のような道程を経て、现在の気象庁は、「防灾官庁」としての指导性を発挥する组织を目指していると考えられる。実际、集中豪雨や台风といった自然灾害が起きるたびに、我々は気象庁职员が会见する姿を目にし、彼らが积极的に公表する警报や注意报などの情报に接する。こうした现代日本における気象庁の役割が大きくなっているからこそ、この组织の実像を知る必要性は高まっているのではないだろうか。本书が、気象庁という「行政组织」を知るための手がかりになれば幸いである。
(紹介文執筆者: 若林 悠 / 2020年9月14日)
本の目次
第一章 本书の课题と视角
第一节 行政学?政治学における「専门性」
第二节 行政学研究への科学社会学の视角の导入
第叁节 本书の视角の设定
第四节 対象の性格
第二章 近代日本の気象行政――「エキスパート?ジャッジメント」の制度化
第一节 天気予报の开始と「研究机関」路线の定着
第二节 戦时体制下の気象行政と「危机」の顕在化
小括
第叁章 戦后日本の気象行政の形成――「エキスパート?ジャッジメント」から「机械的客観性」へ
第一节 平时への復帰と「现业官庁」路线の定着
第二节 「客観的」な「予报」へのパラダイム転换
小括
第四章 戦后日本の気象行政の确立――「机械的客観性」の制度化
第一节 気象庁における「企画」の役割の増大
第二节 「防灾官庁」への社会的期待の表出
第叁节 国内気象监视计画の策定
小括
第五章 现代日本の気象行政の动揺――「エキスパート?ジャッジメント」の再生
第一节 「天気予报の自由化」の背景
第二节 気象业务法の改正
第叁节 「天気予报の自由化」がもたらしたもの
小括
结语
関连情报
2020年度 (第24回) 日本公共政策学会賞奨励賞 (2020年6月6日)
书评:
安部美和 評 (『年報行政研究』第55号 2020年5月)
城山英明 評 (『UP』第565号 2019年11月)
和田武士 評 (『都市問題』第110巻第10号 2019年10月)
本だな 田中省吾 評 (『天気』第66巻第9号p.651-652 2019年9月)